狭い敷地の小さな庭のメリットは他のページでいくつか紹介してきました。植栽密度を高めやすいので雑木の庭の雰囲気作りがしやすかったり、剪定や水やりの管理が楽だったり。
 しかし以下のようなデメリットもあります。

・庭の境界線から雑木の「枝」が越境しやすい
・「落ち葉」がお隣さんの敷地に入ってしまう

 雑木は樹種によっては驚くほど成長が早く、気が付けば上空の枝がお隣さんに越境してしまっているということがあります。また秋の落葉シーズンや春の常緑樹の葉っぱの更新時期は、落ち葉がお隣さんの敷地に入ってしまったりします。「癒し」を求めて作庭した雑木の庭で、近所トラブルとなってストレスになってしまうことは避けたいものですよね。

 これらのデメリットを抑えるためには特に植栽計画(デザイン)が重要。植栽は一度行ってしまうと後からやり直しが効きません。庭づくりを失敗しないために注意して欲しいことをお伝えしたいと思います。

1.「枝」が越境しにくい植栽配置にする

 木の種類とその特徴は実に様々。樹高 /成長速度 /枝の広がり /常緑樹か落葉樹か /葉っぱの大きさ /葉っぱの量 などの特徴は木によって違いがあります。小さな庭の境界線の中で管理するには植栽時の工夫が必要です。

(1)成長速度の速い高木は庭の境界線から離す

 例えばコナラやモミジがこれに該当します。コナラは里山の雰囲気を出してくれる上に大きな木漏れ日を作り、強い日差しにも強いという特徴を持っています。雑木の庭のシンボル的な存在であり、是非植えたい樹種です。しかし成長が早い上、葉っぱも大きく、樹高も高くなり最も越境しやすい樹種でもあります。
 また、コナラは8m程度になることも覚悟した方が良く素人が脚立で剪定できる範囲を超えてしまいます。もしも境界線近くに植えてしまうと上空の枝が直ぐに越境してしまい、毎年プロの庭師さんに依頼することになってしまうでしょう。

(2)樹高が高く枝が広がる樹種は庭の境界線から離す

 こちらもコナラやモミジなどがこれに当たります。イロハモミジは横に広がるスラっと華奢な枝ぶりが魅力でもあります。その魅力を十分引き出すために境界線から遠ざけた方が良いでしょう。感じ良い枝を切らざるを得ない状況は避けたいものです。

(3)成長が遅く枝の広がらない樹種を境界線近くや高木の下に

 主に低木類がこれに当たります。成長が緩やかなものが多く越境するリスクを抑えることができます。ただし注意しなければならないのはこれらの低木は日光を嫌う樹種であることが多いこと。一番南に配置すると株元や幹にに直射日光がガンガンにあたってしまい葉焼けし枝枯れし、次第に弱ってしまいます。

 そうならないための工夫として、「フェンスを立てる」ことが挙げられます。縦格子か横格子で風を通す木製か樹脂のものがお勧め。
 もう一つのお勧めの方法が「チャボヒバ」をフェンス際に植えること。成長が遅く直射日光に耐えて枝が広がらない針葉樹であり、フェンス越しに間隔をあけて植えるだけで際に植えた低木を日差しから守ってくれます。
 私の庭にもチャボヒバが庭師さんの判断で植えられていますが、その恩恵をとても感じています。針葉樹を好まない人もいると思いますが(私もその一人でした)、フェンス越しに植えることで冬以外は他の落葉樹に隠れてその存在があまり目立ちません。雑木の庭の維持に合理的な名脇役だと思います。

2.「落ち葉」が越境しにくい植栽配置にする

(1)葉っぱの大きく厚い樹種を境界線から離す

 樹種により、葉っぱの大きさや厚みは様々で、その特徴が落ち葉のご近所ストレスにも影響します。イロハモミジの落ち葉は小さい上に葉の厚みが薄いため、乾燥状態では簡単にパリパリと小さく砕けてしまいます。しかしコナラは葉っぱ自体が大きい上に、葉っぱの繊維が強く厚みもあり原型が崩れにくい特徴があります。常緑樹の葉っぱも同様に厚みがあります。

 風の影響もあり落ち葉の越境を100%抑えるのは難しいですが、せめてストレスの高い大きく厚みのある落ち葉を越境させないように境界線から離れた場所に植えることをお勧めします。

(2)葉っぱが多く背の高い樹種を境界線から離す

 コナラ、モミジ、は落ち葉の量が半端なく多く、落葉ピークには数センチも積もるほど。さらに樹高があるため風の影響で落ち葉が広がってしまいます。一方で、低木は葉っぱの総量が少ないものが多く、風で広がる範囲も限られています。当然前者の方が越境の確率が高くなるので境界線から離した方が良いということになります。

3.まとめ

以上のことを樹種ごとにまとめてみました。Sランクほど越境確率や落ち葉迷惑度が高く、植栽計画に注意が必要です。

上図のSからDランクの樹種を小さな庭でどこに配置するのが良いのか? お勧めの配置位置(例)を下図に記します。

 次に理想的な配置の断面イメージを下図に示します。
小さな庭では、フェンス際には低木、家側には高木、その中間に中木を配置し、葉っぱがフェンスから家屋の屋根に向かって円弧を描くような配置が理想です。これまでお伝えした越境のリスク以外にも、剪定時に脚立では届かない高木の剪定を2階の窓から高枝切りばさみで安全に行えるというメリットもあります。
 また、あくまで生活の一部の「庭」ですので「人」が気持ちよく歩いたり庭仕事したり座ってコーヒーを飲んだりするスペースも木漏れ日の中に確保することを犠牲にしないようにして欲しいと思います。

 実は残念ながら我が家の植栽は上記の通りになっていないところがあります。モミジやアオダモはフェンスに近い場所に植えられており、アオダモはまだ無知だった頃に自分で植えたもの。
 毎年春の剪定で越境してしまう枝を切っています。切りたくない枝を切らざるを得ない状況に陥ってしまい、自然樹形を維持するのに苦労しています。上記の内容がこれから庭づくりを考えている人の管理しやすい庭に繋がれば嬉しく思います。