庭づくり・ガーデニングを始める前にご一読を! 

1.庭師に頼むか、DIYするか?

 大きな木を運び植えつけていく雑木の庭づくり。DIYという選択肢を持っていない人が大半ではないでしょうか。木を売って運んでくれる業者もあれば、最近はインターネットで3m程度の木を運んでくれるショップやヤフオク出品者もいますので、あとはある程度の知識と思い切りがあれば手軽に出来てしまいます。
 もちろん、庭師に依頼するメリットもいっぱいありまさに一長一短。そのことを十分理解したうえであなたに合った方法を選んで頂きたいと思います。以下にそのメリデメをまとめました。
ちなみに一概に庭師と言っても作る庭はイロイロ。料理人の中にも寿司職人やフレンチ、大衆食堂の大将などと同じ。ここでは、「山採りの華奢な雑木を使った庭を造る庭師」を前提とします。

(1)庭師のメリット

・木の選定、配置のセンスの良さ

 長い期間、勉強し場数を踏んでいる経験値から、その庭の環境に合った配置を提案してくれます。誰でも何かを作るとき、初めてより2回目の方が上手くできますよね。DIYでの作庭後に目が肥えてきて気に入らなくなってしまうようなことは避けたいものです。
 しかし庭師によってそのセンスは千差万別。庭師がこれまで作ってきた庭のホームページの写真や現物をよく見て、自分好みかどうかを見極めることが重要です。

・規模の大きな作業が可能

 石を自宅まで運んでくれる石屋さんもありますが、庭に運び入れてからの向きを変えたり動かしたりする作業は石の大きさによってはDIYでは難しい上、安全上もお勧めできません。
 照明の追加は簡単そうですが、工事内容によっては第二種電気工事士の資格が必要です。

 つまり求める庭の姿によっては素人の限界を超えてしまいます。

・数年後に差が出る、土づくりや排水のスキル

 優秀な庭師さんほど土づくりや排水に拘っています。それは数年後の庭の姿に大きな影響を与えます。土や排水性が悪いと根が十分に広がらず、水を吸い上げる能力が低下してしまいます。すると葉っぱを維持できなくなり徐々に枝を枯らし、最悪の場合は木自体が枯れてしまいます。
 植栽後に大規模な土壌改良しようとしても他の木があり簡単にできるものではありません。根本対策は植栽前にしかできません。
 もちろんDIYでも植栽前の土壌改良は可能ですが、知識と体力が必要になってきます。

(2)庭師のデメリット

・庭師によっては、良い状態が長期に維持できないリスクがある(ベストな状態をいつに持ってくるか)

 多くの庭師さんがホームページやインスタグラムなどで作庭後の庭を紹介しています。そういった写真を見ていると、涼しげな雰囲気に目を奪われますが、同時に「この庭はこの後この状態を維持できるのだろうか?」という疑問を感じることが多くあります。これは庭師さんの個性によって差が出る部分ではありますが、重視するベストなタイミングの差ではないかと考えています。つまり、「作庭時をベストな状態にする」か、「作庭後ベストな状態になっていく」ことを目指すか。

 具体的にどういう状態のことか? について説明します。
 下枝のほとんどない華奢で背の高い感じのいい山採りの木をポツンと、木肌に直射日光がガンガン当たるような環境で植えられている状態…
 自然味あふれる山採りは家の雰囲気をより際立たせ多くの人に魅力的な印象を持たせますが、この状態は長続きしません。街中でシンボルツリーといった感じで南側の日当たりの良すぎる庭の真ん中に、山採りっぽい雑木と低木、下草を少々植えているお庭が、年々枝枯れが進みひどい状態になってしまうのを目の当たりにしたことがあります… そもそも山採りの木が育ってきた環境とは真逆のものになってしまっています。

 詳しくは、雑木の庭DIYの重要な2つのポイントで触れますが、直射日光が株元に当たるような環境に晒された木は山から切り出されたことで露になった幹を強い日差しから守ろうと胴吹きの枝葉を出し始め、その姿を変えていってしまいます。その胴吹き枝を剪定で払い続けると幹への日差しのダメージが蓄積し弱り始めて、やがて枝枯れが始まる可能性が高まります。山採りが自生している環境を知れば、その庭の環境の厳しさが容易に想像できるでしょう。

 もちろん、庭に求める価値観は人それぞれ。そのことがダメだということではありませんが、施主がそういったリスクを知っておくことは作庭後の庭との長い付き合いを良好なものにするために必要なことだと思います。
 しかし、その後下り坂を転がるように残念な姿に変えていく庭に、施主は庭木が調子を崩す原因まで辿り着けず悩んでいる人が多いようです。ネットなどで施主発信の情報も少ないので、このような状態が悪化するリスクを知る機会は少ないのでしょう。実際、Yahoo!知恵袋などで庭木の維持管理に困っている人の多さに驚かされます。もちろん、庭師さんの中には、施主目線の長い目でベストな状態を維持することを重視する方も多くいらっしゃいます。

 ベストな状態のみ切り取った「インスタ映え」の罠にはまらないように、長期的な時間軸で自分の求める庭の姿と、庭師の求める方向性が合っているかをしっかり確認し、後悔の無い選択をして欲しいと思います。

(3)DIYのメリット

・楽しい

 レイアウトを考え、気に入った木を探し、土壌を改良し、木を植える。自分でやってみると、とても楽しいことだと実感できる人が大半ではないでしょうか。なぜなら雑木の庭が作りたい人だから。そんな楽しいことを自分でやらないのはもったいないと感じるはずです。
 特にコロナによる生活スタイルの変化として、自分の庭で体を動かすことができるのは大きなメリットとなるのではないでしょうか?

・安価に抑えられる

 庭師さんに頼むのと自分で作るのでは、金額に大きな差が出てきます。規模にもよりますが、庭師さんに頼むと1坪20~30万円程度。DIYなら密度の濃い1坪で5万円程度(高木・中木・低木・下草)。
 やは予算を安く抑えられるというのがDIYのいちばんの魅力ではないでしょうか?

・自分好みに「納得いくまで」こだわれる

 癒される感じのいい庭を求め、庭師に作庭を依頼し高いお金を払ったにも関わらず、出来上がりに不満を感じてしまうほど空しいことはありません。仕様検討時点では施主の要望を入れることはできますが、自然素材を使うため家のような完成度の高い図面を仕様段階で確認することはできません。イメージとして捉えるレベルと思った方が良いでしょう。

 施工が始まり、描いていたイメージとのギャップが発生した場合、庭師の作ったものに変更を依頼するのはとても気を遣うハードルの高いものになってしまいます。こだわりの強い庭師に至っては尚のこと。

 これは庭師によって差が出ます。美的センス(木の植栽時の傾け具合、傾斜や石の配置)、生活空間である庭としての機能的知識と意識(排水、石組階段の段差の大きさ、飛び石として機能する十分な大きさやピッチ)、性格(几帳面か大雑把か)。それらを見極めるのは難しいでしょう。もしも可能であれば、実際にその庭師の作ったお庭を現地現物で見て、施主さんに話を伺いたいものです。要は「口コミ」ですね。

 他にも、見積もりに書かれる木の特性と実際の木の選択は庭師によって差が出ます。例えば、「4mアオダモ株立ち」といってもピンキリです。株の本数・山採りか畑ものか・本株立ちか寄せ株か・主幹から分かれる枝の本数や広がり具合・幹が直立か流れか・・・それにより金額が大きく変わってきます。工業製品ではないので施主の要望を入れ込むのは難しいでしょう。

 以上のことから、庭師に依頼する場合は、その過去の庭師の作品が自分の求めるものかどうかを見極め、後は任せる!という姿勢が必要ですし、そのような優秀な庭師は「着工まで数年待ち」なんてことも珍しくないようです。

 DIYのメリットは上記の内容の逆。自分が拘り納得いくものを選び、配置していけばイイわけです。このメリットは非常に大きいと思います。
 もうひとつのメリットとして「作庭後の庭の管理や補修のリテラシー向上」が挙げられます。庭を造る機会なんて、そうあるものではありません。その貴重な経験をした人は作庭後のメンテでその経験を活かし自分でいろんなことが出来るようになるでしょう。もちろん剪定などのメンテも含めすべて庭師に依頼するというのも選択肢ですが、人気のある庭師さんほど忙しく、適期でのタイムリーな対応は期待できないかもしれません。

(4)DIYのデメリット

・失敗に終わる

 雑木の庭DIYの失敗… これは庭に限らず、すべてのDIYが抱えるリスクではないでしょうか? 最近は家のリフォームなどのDIYの人気番組の影響で、「自分でやってみよう!」と思い立ちますが、上手くいかず復帰もできず結局業者に頼むことになり、最初から頼んだ方が安かった…という残念な結果になってしまう人が多いそうです。

 見切り発車は厳禁! 手順や道具、必要な技量などを下調べし、DIYの具体的な進め方や手順のイメージできれば失敗リスクは大きく下がるでしょう。自分でやれる部分を見極めて、やれなさそうな部分はプロに依頼する方法もアリだと思います。私もその方法を取っており、徐々に自分でやれる部分を増やしています。自分好みに庭の完成度を上げたいのであれば、むしろその方法をお勧めしたいです。

2.DIYを決断する前に注意すること

・見切り発車に注意!プロの庭から学ぼう!(具体的なイメージを考える)

 最大のDIYのデメリットは前述の通り「失敗に終わるリスク」でしょう。中途半端に木を植えたが全然イメージと違いただ木が並んでいるだけ・・・その上枝枯れが始まった。
結果的に「プロに頼んだ方が良かった」と後悔することになってしまうかもしれません。
 その敗因は、一言で言えば「段取り不足」。初めての庭づくりで失敗しないためには、「始める前にいかに知識不足、経験不足を補うか?」が特に重要。
その手段としてお勧めなのが、「プロが作った庭をたくさん見ること」。以下のような方法をがお勧め。

①雑木の庭の本
 様々な特徴を持った庭師が作った庭の写真と配置図を見ることができます。

②造園屋さんのホームページ
 施工例が載っています。また、見学会のようなイベントを実施することもあるので現地現物で触れてみるのいいと思います。

③インスタグラム
 ♯雑木の庭 で、いろんな庭が見れます。上記と違い、施主側の発信も含まれているので参考になることも多いかと思います。気になることをコメント欄より質問できることもメリット。

④オープンガーデンに参加する
 様々な市町村や団体で「オープンガーデン」を企画しています。個人宅のお庭を見させて頂くわけですが、こちらは完全に施主側発信。ダイレクトに質問できるのもいいですよね。しかし、バラなどのイングリッシュガーデンが多くを占め、雑木の庭に巡り合える機会は少ないことがデメリット。

⑤自然の木々の植生に興味を持つ
 雑木の庭は、刈り込まれた和風庭園とは違い、自然の姿を再現することを目指した庭です。多くの自然の中で自生する環境を目にすることで、多様な自然の摂理の気付きを与えられるはずです。自然公園や里山の散策などで木々の環境や姿を良く観察してみてください。
 例えば、庭のような平坦な場所というのは意外と少なく、大きな起伏で構成されていることに気付きます。また、木々の株は不等辺三角形で構成され高木、中木、低木、下草と、不揃いなことが自然だったり。

 あなたがある庭を見て不自然に感じたとすれば、それは「あなたが無意識の中に持っている自然の摂理の感覚」に合わなかったということでしょう。自然に触れながらあなたの無意識にある「自然の摂理」を意識して気付きを得てください。そのことが必ずあなたのデザイン力を上げ、違和感のない自然の庭に近付ける秘訣になります。

 施工前の計画段階で「どのように起伏を作り、どれぐらいの高さのどんな木をどこに植えるのか」庭を眺めながら具体的なイメージした上で上面視の配置図に落とし込むと、よりリアルにイメージが更に深まりブラッシュアップできると思います。

 さて、庭師に依頼するかDIYするか、その中間か、いかがでしょうか?
DIYの選択肢をお考えであれば、次の記事にてもう少し深堀りして進め方をお伝えしたいと思いますので是非ご覧ください。

【以下、次の記事へ】

雑木の庭DIYで重要な2つのポイント

雑木はどこで買う?

小さな庭の植栽計画で気をつけること