雑木の庭とSDGs

 最近、メディアや職場など、様々なところでSDGsという文字を目にします。ビジネス界では「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」につながっているか? が、投資家への期待値に応えることになりつつあり、その重要度も年々増しています。
 重要なポイントの一つは「サスティナブル(持続可能)かどうか?」。改めて我々の生活を振り返ると、やがて破綻する持続不可能な環境で生活していることに気付かされます。例えば、身の回りに溢れている化石燃料から作られるプラスチック。生成から廃棄のサイクルは石油の枯渇でやがて破綻しますし、償却時に出るCO2も投棄によるゴミも決してサスティナブルではなく、やがて破綻します。発電の約75%を石油に頼っている日本のエネルギー事情も、電気自動車でさえもそのエネルギーが石油由来であればサスティナブルでは無い訳です。
 実生活においてもSDGsを意識していく時代になりつつあり、今回「雑木の庭とSDGs」の関係を考えてみたいと思います。

持続可能な開発目標SDGsエス・ディー・ジーズとは

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)別ウィンドウで開くの後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

外務省HPより JAPAN SDGs Action Platform | 外務省 (mofa.go.jp)

昔の人々の生活はSDGsそのものだった

 戦前までの人々の生活において、効率的に生き抜くために取っていた手段は現代から見るとSDGsそのものであることに気付かされます。
 し尿を肥溜めで発酵させ肥料にし野菜を育て食料にする。そのサイクルはまさにサスティナブル。
 戦前まで見られた「里山」。薪にするために木を伐採しますが、その切り株から出る新たな芽がやがて太い幹となりまた伐採が可能になる。切り株から芽が育つように藪を掃い日当たりを確保する。これもまさにサスティナブル、未来永劫繰り返すことが可能であり、子どもたちに胸を張って時代のバトンタッチが出来ていた訳です。

雑木の庭のSDGs考察

雑木や山野草を育てている庭について考えてみました。良い悪いとかは別として、まずは事実を受け止めたいと思います。

1.サスティナブル度の高い選択

 右図に庭のイニシャル(庭木、山野草)とランニング(水やり、施肥)についてサスティナブル度をまとめてみました。選択するときにサスティナブル度という切り口を判断材料の一つにしてみてはいかがでしょうか?
 この中で特に素人でも簡単に持って帰れる山野草について、特に希少種に関しては絶滅に向かってしまうことから、出処がはっきりしていない物(素人のオークション取引など)を購入しないようにすることで避けられるかと思います。私も以前は素人っぽい方からオークションで山野草を購入したことがありますが、今は盗掘の可能性のある人からは買わないようにしています。

2.雑木の庭はSDGsの17のゴールのどれに当てはまる?

11.住み続けられるまちづくりを(都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする)
13.気候変動に具体的な対策を(気候変動に立ち向かうため緊急対策を取る)

 緑化への貢献。ヒートアイランド現象の抑制、温室効果ガスであるCO2の吸収など、「住み続けられるまちづくり」「気候変動への対策」に貢献できます。雑木の庭では多くの人が木漏れ日の環境を目指すと思いますが、これは夏場の住居の温度上昇の抑制につながり、エアコンの電気使用量を抑えることにもつながります。
 木を植えることによるCO2の吸収についての効果は、実は残念ながら微々たるものです。家族4人の呼吸で発生するCO2総量を吸収するためには杉の木100本ほどが必要で、自家用車や電気使用量など含めるととても賄いきれる量ではありません。しかし、だからと言って何もしない「0」とは明らかな差はあります。CO2削減に貢献する姿勢と貢献度の事実を知ることが大切ではないでしょうか?

12.つくる責任 つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)

 持続可能な生産と消費のパターン。小さなことですが、1.で示した「肥料」の在り方で、自家堆肥や枯葉の活用が当てはまるのではないでしょうか。枯葉は、コンポスターなどを使わなくても自然の雑木林のように株元に撒くだけで菌糸などにより分解されて良質な肥料になり、確実に樹木を元気にすることができます。枯葉を株元に撒くのは見た目が気に入らないと感じる人もいるかもしれませんが、グランドカバーの役目をする山野草を植えることで春になれば枯葉が見えない状態になりますよ。苔庭を目指している人には難しいかもしれませんが、そうでない人は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 いかがでしょうか? このような記事を書いている私も、雑木の庭を「自然に近い=環境に良い」と感じていましたが、大切にしている庭を改めて見つめなおすとサスティナブルではないことが多いことに気付かされます。事実を受け入れることでSDGsの思想のギャップを認識し、少しずつ変えていこうと思います。