カミキリムシ(成虫)の被害と対策

 「テッポウムシ」という虫をご存じでしょうか? 特にバラを育てている人は被害で悩んでいるのではないかと思います。 バラに限らず特定の庭木の幹の内部に侵入し内部を食い荒らすことで木を弱らせ最期には枯れさせてしまうという、かなりの困り者です。株元に“おがくず”のようなものが溜まっていたらテッポウムシによる食害を受けている証拠。これはカミキリムシの幼虫の被害となりますが、今回はその成虫による被害と対策について触れたいと思います。

(テッポウムシに関する記事を追加しましたので宜しければコチラよりご覧下さい)

1.雑木の庭のカミキリムシによる被害について

 雑木の庭では、テッポウムシの被害もさることながら成虫のカミキリムシによる被害も悩みの種。6月になると被害が出始めます。成虫は比較的細めの木の皮を強力な顎を使い剥ぎ取ることで、そこから先の枝にダメージを受けてしまいます。住宅地で最も見かけるゴマダラカミキリが好む枝の太さは、「割りばし」から「指」程度の比較的細いもの。場合によっては枝の周囲をグルリと樹皮を一周剥いでしまい、そうなると多くの場合は齧られた部分から枝の先端にかけてすべて枯れてしまいます。
 また、齧られた樹皮が一周までいかずに何とか枯れずに済んだとしても、ちょっとした風や剪定時の軽い衝撃でいとも簡単にボキッっと折れてしまいます。
 なぜ枯れたり折れやすくなってしまうのでしょうか?

 これは、木の幹や枝の断面の構造が関わっています。葉っぱで作られた栄養や根から葉っぱに向かう水分やミネラル分は、樹皮や樹皮に近い木の内部を通っていきます。そのため、樹皮が一周齧られることは根と葉っぱの間の繋がりが遮断されてしまい枯れてしまうのです。
 実は、木は中心部分よりも樹皮および樹皮に近い部分が水分を伝達する重要な機能を果たし、たとえ中央部が朽ち果てても生きていくことが出来るのです。

 また、幹や枝の中央部は死んだ細胞の集まりで固く締まっており、骨のような役割を果たします。この中央部の骨とその外側を取り囲む樹皮のしなやかさにより強風に耐える自然の仕組みになっているのです。そのしなやかな樹皮が齧り取られることで、枝がしなる際に応力がその部分に集中し、いとも簡単に折れてしまうのです。

 良い樹形を作り込もうと、剪定時に伸ばそうと残しておいた柔らかく伸びる大切な枝がカミキリにより途中から枯れてしまったときは、かなりのショックを受けてしまいます…

2.カミキリムシの被害を受けやすい樹種

 カミキリムシにも好き嫌いがあり、被害の受けやすい木と受けない木があります。また、カミキリムシにも様々な大きさや色合いの種類が存在し、種類ごとに好む木の種類にも差があるようです。
 主にモミジ、クリ、バラ、ヤナギ、柑橘類、イチジク、ナシなどの果樹類が被害を受けます。

 先述の住宅街でよく見かけるゴマダラカミキリは、大きさは5㎝程度で黒に近い紺色に白い斑点があるのが特徴です。
 我が家でも被害はすべてこのゴマダラカミキリで、モミジ類、コナラが被害を受けています。
特にモミジ類は枝が華奢で細くしなやかなのが魅力。齧られたらひとたまりもありません。我が家はイロハモミジ、コハウチワカエデ、オオモミジのモミジ類を植栽していますが、全てが被害の対象です。

 齧られたとしても、範囲が小さければ枝が枯れることはなくまた木が持つ自然治癒力により齧られた部分を数年かけて樹皮で覆って塞いでいきます。

 ちなみに、上記以外の樹種※が被害を受けたことはありません。被害を受けない樹種を選ぶことが確実・最大の対策かもしれませんね。
※アオダモ、アカシデ、ソヨゴ、ツリバナ、オトコヨウゾメ、ガマズミ、ジューンベリー、チャボヒバ

3.被害を抑えるためにできること

 どこからともなく飛んできて、枝を齧って枯らしてしまうカミキリムシ。完全に被害を抑え込むのは難しいのですが、抑制することは可能。私がこれまで行ってきた手ごたえを感じている対策を紹介したいと思います。

(1)寄せ付けない

 カミキリムシは、触覚と嗅覚が非常に優れています。決して樹木の密度が高くない住宅街の環境で、しかもカミキリムシが好む樹種めがけて集まってくるというのは、その能力が高いという何よりの証拠でしょう。その鋭い嗅覚を逆手にとって、虫の嫌がる臭いを拡散すれば寄り付きにくくなるという訳です。

 そこで私が効果を感じているのは、

  • ニームオイル
  • 木酢液、竹酢液

 ニームオイルも木酢液・竹酢液も園芸店で売られています。ニームはインドセンダンから抽出された天然由来の農薬の効果があるもので、環境にこだわる人に人気があります。
 木酢液や竹酢液は水虫治療やアトピーにも効果があると言われ、園芸分野以外でも手に入れることが出来ます。また、木酢液や竹酢液は希釈濃度を変えることで病害虫や草木の根の活性化の効果もある万能な液体です。ちなみに園芸用より人体に使うものの方が純度が高く安全性も高いそうです。

 ニームオイルも木酢液・竹酢液も独特の臭いを持っています。ニームオイルは油粘土のような臭い、木酢液・竹酢液は燻製の臭いがします。
 これを希釈してゴマダラカミキリが発生する6月頃から週1のペースで庭全体に散布することで、被害が無くなるまでいかないものの、確実に減った手応えを感じています。

(22年8月追記)
 今年は毎日ほんの少量の竹酢液散布をしましたが、今のところカミキリ被害は受けていません。庭から少しでも臭いを発していれば効果があるのではないか?と考えました。

 また、オルトランDX(粒状)を株元に散布する方法も取っています。オルトラン(粒剤)は、「浸透移行性」といい、根から吸収した薬剤が葉っぱまで行き渡ることで、吸汁性、食害性の被害を抑えるというものです。アブラムシには確実に効果がありますが、カミキリムシについては他の対策も併せて実施していることもあり効果を特定することは出来ませんが、被害が抑制されている可能性があります。効果を感じられればまた別の機会の紹介したいと思います

(2)捕殺する

 これは、寄り付いてしまった虫に対して一番確実な方法です。しかし高い枝に止まっていたりと探して見付け出すことが難しかったりしますよね。
 実はとても簡単な方法があるんです。それは木の幹に衝撃を与えて落下させる方法です。

 カミキリに限らず、多くの甲虫はこの方法で落とすことが出来ます。カメムシや小型のコガネムシなど比較的小さな虫は、落下する途中で翼を広げて飛んで行ってしまうことがありますが、ゴマダラカミキリは地面まで落ちてくれるので、その落下点さえ認識できればその後簡単に捕殺できます。

 衝撃を与える方法は、木の太さにより異なります。
幹が物干し竿程度の太さの木は、片手の掌でトン!っと叩くイメージで。
幹が腕の太さほどある木は、両手の掌で幹にドン!っと衝撃を与えます。叩きつつ押すイメージで。

 ただし良くある失敗は、「落下したはずだけど見つからない」こと。木に衝撃を与えるときは視点と意識を地面に集中するか、他の人に見ていてもらうとことで失敗は少なくなると思います。

 6月、7月の被害を受ける時期は、水やりのついでにカミキリが好む木に衝撃を与えてみてはいかがでしょうか?

(3)木の健康な状態が維持できる植栽方法

 カミキリムシ被害は、弱った木が受けやすいと言われています。特に卵を産み付けられやすくなるそうです。これは毛虫の被害にも同じことが言えるのですが、元気な木は虫の忌避効果のある物質を分泌します。そのため、木を健康な状態で維持することが被害抑制につながります。

 雑木を良い状態に保つためには、①株元や幹への強い日差しを避けた植栽 ②土壌の水はけ が重要になってきます。これは植栽時にほぼ決まってしまうもの。この辺りは以下の記事、
 雑木の庭DIYの重要な2つのポイント 
 失敗しない「小さな庭」の植栽計画 
で詳しく書いていますので参考にしてください。

(4)殺虫剤についての注意事項

 園芸店の農薬コーナーでは、カミキリムシ(成虫)にも効く希釈して散布する農薬が売られています。しかし私はそのメリットよりもデメリットが大きいためこれらの使用をあまりお勧めできません。使用する方が良い状況もあるかもしれませんが、以下のことを知ったうえで判断して欲しいと思います。

①農薬が与えるネガティブなインパクトが大き過ぎる

 農薬はカミキリムシだけでなくその他の昆虫にも効果があり、益虫もろとも殺虫してしまいます。しかし、繁殖力の高い小さな害虫であるアブラムシやハダニはその後生き残りが爆発的に繁殖を繰り返します。そのため、バランスが崩れて害虫被害を拡大させるリスクがあります。また、土中環境に悪影響を与えることを指摘する声も存在します。

②散布後の効果が限定的(その1)

 カミキリムシは鋭い臭覚で好みの木まで飛んできます。毛虫のように、卵から孵化し1本の庭木に棲みつく訳ではありません。農薬を散布したときに木に止まっている個体には効果がありますが、その数日後に新たに飛んでくる虫には効果はほとんどありません。

③散布後の効果が限定的(その2)

 薬剤は、散布したのちも葉っぱに残ったものが効果を発揮し続けますが、徐々に落ちてしまいます。特にこのカミキリムシの被害を受けるのは梅雨時期であることから、雨により流されやすく効果が持続しにくいのです。1週間後の効果として、降雨が無い場合は80%、降雨時は10%程度の残効性との情報もあります。そのため、庭全体にインパクトの大きい農薬で防除しようとするとかなりの頻度で散き続けなければなりません。

4.まとめ

  • 雑木の庭にとって、カミキリムシ(成虫)の枝を齧られる被害は無視できない
  • カミキリムシが好む樹種は限られている。モミジ類、コナラ、果樹類に注意
  • 対策① ニームオイルや木酢液・竹酢液水溶液の散布により、臭いで寄せ付けない
  • 対策② 木の幹に衝撃を与えて落下させて捕殺
  • 対策③ 木の健康な状態が維持できる植栽方法を取る
  • 殺虫剤を使用するときはリスクを知った上で判断を

(22年8月)
この記事を動画にして、YouTubeにアップしました。簡易版ではありますが、楽しく見ていただけるようにと思い制作しました。よろしければ、是非ご覧ください!