小さなアジサイ、”ヤマアジサイ”の魅力と 雑木の庭
5月中旬から6月初旬に掛けてヤマアジサイの季節を迎えます。雑木の庭と相性が良い日本固有の植物で、1年を通して大きな楽しみの一つになっています。私は作庭後にヤマアジサイを知り、その魅力に取りつかれ、ほんの10坪ほどの小さな庭に50種を越えるヤマアジサイを植えており、ヤマアジサイの沼にハマっています…
今回はそんなヤマアジサイの特徴や魅力をお伝えしたいと思います。
1.アジサイは日本固有種
5月に入ると園芸店で並ぶアジサイ。ガーデニングが趣味の人は良く見かけるのではないでしょうか? 母の日のシンボル的な存在だったカーネーションから近年はアジサイに変わりつつあり、実に多様な色や形のガクを持った品種が並びます。アジサイを英訳した”ハイドランジア”という名称で売っているものが多くを占め、国内に限らずヨーロッパから入ってきたものも多数あり、一般的に”西洋アジサイ”と呼ばれています。ちなみにアジサイは落葉低木の仲間です。
実はこれらのアジサイは、江戸時代にヨーロッパに渡った日本のアジサイが品種改良されたものだということをご存じでしょうか? ヨーロッパで人気のバラに並ぶ新たな植物として熱狂的に品種改良が進み、戦後になって日本に輸入され始めたという歴史があります。世界には、他にも中国や台湾、韓国、北米(カシワバアジサイ・アナベルなど)などにもアジサイ科の植物は分布しています。
日本のアジサイは、大きく分けて4種類からなり、自生地も以下のような特徴があります。
・ヤマアジサイ…小型・関東以西の西日本、屋久島(一部韓国にも自生する)
・エゾアジサイ…中型・北陸、東北地方、北海道
・ガクアジサイ…大型・伊豆半島、三浦半島、房総半島の一部
この中で野生種がいちばん多いのはヤマアジサイ。西洋で品種改良が進んだアジサイとは違い、自然の中で多種多様な色や形のものが生まれました。今回参考にさせていただいた著書「アジサイ百科 Aboc社 川島 榮生著」によると、ヤマアジサイ約1,900種、エゾアジサイ約140種、ガクアジサイ70種ということで、いかにヤマアジサイの種類が多いかがわかるかと思います。
2.ヤマアジサイの魅力
一般的に、”アジサイ”のイメージはどのようなものでしょうか? 小学生の頃に書いた絵や、ご近所の玄関や公園に植わっていた姿、梅雨時期のシンボルとして使われる挿絵や写真など、どれも”西洋アジサイ”と呼ばれる品種ではないでしょうか?
花はどんぶり程の大きさがあり、葉っぱは大きく艶やかで、数えきれないほどの株立ちの上、樹高は身長ほどにもなる、 そんなイメージではないかと思います。
”ヤマアジサイ”は全くと言っていいほどその雰囲気とは異なります。花の形こそ似ていますが、花序の大きさはお猪口ほど、葉っぱは薄く小さく艶は無く、幹は細くヒョロっとしており、品種にもよりますが約30㎝から50㎝ほど。園芸店でも樹木扱いではなく、山野草と同じ流通に乗っています。
また、前述の通り非常に多くの種類が存在し、ガクの色(白・赤・ピンク・青・紫・緑)、ガク片の数(一重、八重)、ガクの形、両性花と装飾花の比率(ガク咲き・半テマリ咲き・テマリ咲き)、葉っぱの斑や幹の黒軸・赤軸など、実に多種多様な色・姿・形をしています。
特徴の中で一番人々を魅了するのはガクの”色”ではないかと思います。言葉でも絵の具でも表現できないような鮮やかさや複合的なグラデーション、どこか人工的なものではないかと疑ってしまうような色彩が、野生種であり更に狭い日本の中に1,000を越える種類が集中して存在するというのは驚きです。
不思議なことに三重県の鈴鹿山脈を境に、東側では白花、西側では青や紫の花にエリアが分かれます。市場に出回るヤマアジサイの大半は白花以外のものであることを考えると、西日本の限られた狭いエリアの中だけでこれほど多様に進化してきたことは、驚きを通り越して不可解にさえ感じてしまいます。またそれがこのヤマアジサイの魅力の一片なのかもしれません。
3.ヤマアジサイの育つ環境
一般的なアジサイはガクアジサイから改良されたもので、野生種のガクアジサイは地下水が染み出る海岸沿いに自生し、塩害に強く日当たり環境を好みます。そのことから、浜アジサイとも呼ばれています。
対してヤマアジサイは、”ヤマ”と付く通り涼しい山地に自生します。こちらも地下水が染み出るような場所で、林床の際などの山地の中では比較的日当たりの良い場所を好みます。
一般的な山野草と同じく、夏の高温や過度の直射日光を嫌います。また冬の低温や乾燥にも弱く、夏も冬も環境に対して気難しい一面を持っています。ちなみにエゾアジサイは前述の通り日本海側や東北・北海道という寒い地域に自生する訳ですが、ヤマアジサイと同じく冬の低温や乾燥に弱いそうです。ちょっと意外に思われるかもしれませんが、実はこの地域は雪に樹木が埋まることで低温になりにくい上、湿度が維持される環境なのです。
以上の特徴から、家で育てるには以下のような育成環境が必要になります。(太平洋側の暑い住宅街を前提にしています)
・夏の高温を避け、一定の日当たりが確保できる環境
→庭木の株元などの木漏れ日環境、寒冷紗が設置できる場所
・夏に根腐れしない、乾燥もしない土壌
→水持ちが良く水はけの良い土壌(腐葉土・バーク・鹿沼土など)
・冬の空っ風が当たりにくい環境
→風の通り道を避ける、家屋の南側に植え北風を遮る、フェンス等で風を適度に遮る
・冬の乾燥を防ぐ
→冬でも適度な水遣り要 温かい昼間に!
なかなか気難しいですね。
鉢植えなら問題ありませんが、地植えの場合は”雑木の庭”との相性が良いというのがご納得いただけるのではないかと思います。
あまり日が当たらない環境だったり冬場の空っ風が当たり続ける環境だと花付きや発色が悪くなってしまいます。
比較的涼しい地域の場合は夏の高温リスクが低いため、ある程度日に当ててあげた方が良い状態を維持できるかと思いますが、冬場の乾燥には気を付けて頂きたいです。
4.ヤマアジサイの魅力の発信
ヤマアジサイの魅力に取りつかれ、本サイトやYouTubeでヤマアジサイの魅力や品種を発信しています。
以下にリンクを貼っておきますので、是非ご覧ください。
ちなみに、リアリティある雰囲気を伝えるには”動画”は有効ですね。最近YouTubeにシフトしてしまっていますが、ブログとYouTubeのメリットを考えながら適材適所で発信していきたいと思います。
(1)私が育てているヤマアジサイの品種
ヤマアジサイ – 小さな雑木の庭の暮らし (miyabi-konohana.com)
※22年6月4日時点で新たに仲間入りした品種のメンテが出来ておりませんが、近いうちに更新します。
(2)YouTube
①ヤマアジサイの魅力の紹介
②ヤマアジサイ中心のオンラインオープンガーデン
③小さな庭への植え付け動画
最後までご覧いただきありがとうございました!