ヤマコウバシ (住宅街での育成環境)

雑木ブームで庭木として扱われるようになった、関東以南の山野に自生する落葉低木です。
病害虫に強く育てやすく、また冬でも枯葉が落ちないという面白い特徴を持った木。雑木の庭づくりで是非入れておきたいお勧めの1本です。

1.冬でも落葉しない

 一般的な落葉樹は、葉っぱの光合成の機能を失うと葉っぱと枝の境界部分にある「離層」というシャッターが閉じられて「ポロっと」葉っぱが分離します。これがいわゆる落葉なのですが、このヤマコウバシは枯れた後も離層から葉っぱが切り離されることが無く、芽吹きの季節まで残ります。

 このことから、「落ちない」という特徴を「受験」と掛けて縁起物として扱われています。一部の地域ではヤマコウバシのお守りが売られているほど。
 しかしこの特徴、庭木としては一長一短。落葉樹は冬に葉っぱを落とす特徴があるからこそ重宝されている面もあります。夏は葉っぱで日差しを遮り、冬は落葉することで日差しを室内に届ける、といった目的で植栽する場合は注意が必要です。また、冬場に枯葉が付いている状態がビジュアル的に否定的な見方もあります。木は一般的に夏場の暑さなどの影響で枝枯れしてしまうと、前述の「離層」も機能を失うために その枝の葉っぱは落葉せずに枯葉として残り続けます。これは良い状態ではなく剪定で真っ先に取り除かれる枝なのですが、この現象のように感じられてしまうことが理由のようです。

 しかし冬の山野で自生するヤマコウバシを見ると、葉っぱが残っている姿は非常に目立ち存在を主張しているかのような印象。その姿を見ればきっと見方も変わるのではないでしょうか?

2.紅葉が綺麗

 ヤマコウバシのもう一つの特徴は、美しい「紅葉」ではないでしょうか? 黄色からオレンジ色の美しい紅葉となります。モミジの「深紅」とのグラデーションが庭全体の紅葉の美しさを際立たせてくれます。
 紅葉中の葉っぱを良く見ると、オレンジの基調の中に葉脈付近の緑色の筋が何とも言えない美しさ。秋の優しい日差しと相まって、自然が作った芸術作品。しかし綺麗な時期はあまり長続きせず、1週間から2週間ほどで「枯葉」の薄茶色に変化してしまいます。

3.日本中のヤマコウバシは、1本の雌木のクローン!?

 このヤマコウバシの面白い記事があります。日本の「ヤマコウバシがたった1本の雌株から生じた巨大なクローンであることを解明」したというもの。大阪市立大学、大阪府立大学、東北大学が21年2月に発表したもの。雌雄異株でありながら実は日本には雌木しか無いそうです。実は雌木だけでも種を付け増殖することが出来るとのこと。しかし遺伝子が交わることが無いため同じ遺伝子となるそうです。そうしてヤマコウバシは日本列島の広い範囲に広がったということです。詳しく知りたい方は、こちら(大阪市立大学HP)まで。

4.ヤマコウバシのギャラリー

4.特徴のまとめ

 このヤマコウバシ、一番映えるシーズンはまさに今の紅葉シーズンではないでしょうか? 植栽の検討している人は、次の2月の植栽シーズンに取り入れて、来年以降の紅葉を楽しんで欲しいと思います。