庭の紅葉・黄葉を綺麗に楽しむコツ

 行楽地を賑やかす紅葉シーズンもいよいよ終盤に差し掛かっています。京都嵐山の紅葉など「紅葉」は日本の四季の風景の代名詞にもなっています。我が家のある愛知県は、豊田市足助町にある「香嵐渓」が有名で、イロハモミジ、オオモミジなどの夜のライトアップも相まって美しい景色に多くの人が集まります。

 そんな紅葉も、「雑木の庭」なら家にいながら満喫することが出来ます。普通は様々な雑木も植栽するため、モミジだけではなく様々な雑木の特徴ある発色により美しい紅葉グラデーションを愉しむことが出来ます。

 しかし観光地のように綺麗に紅葉しないとお悩みの方もいるのではないかと思います。
今回は、紅葉のメカニズム、綺麗な紅葉にする方法と、実際の雑木たちの秋の表情を樹種ごとに紹介したいと思います。

1.紅葉・黄葉のメカニズム

葉っぱに存在する、
・緑成分の「クロロフィル」
・黄色成分の「カロテノイド」
・赤色成分の「アントシアニン」
とい3つの成分の状態により、緑の葉っぱが黄色や赤色に変化します。

 光合成の役割を果たす緑成分の「クロロフィル」は、気温が低下すると徐々に分解されて色素を失っていきます。するとこれまで派手な色合いの「クロロフィル」の影響で目立たなかった、黄色成分「カロテノイド」が目立つようになります。これが「黄葉」の状態です。

 また、赤くなるカエデなどは、 緑成分 「クロロフィル」が作った糖分が葉っぱに残り、それらが日光の影響で赤色成分の「アントシアニン」に変化します。これが「紅葉」の状態だそうです。

2.綺麗な紅葉を楽しむためのコツ

 紅葉の綺麗な年、イマイチな年がありますよね。 また、モミジを植えているお庭は多くありますが、綺麗に紅葉しているモミジが意外と少ないと感じています。綺麗なモミジとくすんだモミジ、何が違うのか、どうすれば綺麗に紅葉させれるのかをお伝えしたいと思います。

(1)天気の影響

 紅葉の状態は、以下の3つの条件に影響すると言われています。
 ①冷え込み
 ②日照
 ③湿度
つまり、川縁などの適度な湿度のある環境で、放射冷却が起こるような晩秋の晴天による急激な冷え込み昼間の日照 が続くと、綺麗な紅葉が見られます。

①②は自分でコントロールできるのもでは無いので天任せとなりますが、③については水やりの頻度を上げることで、空中湿度を多少なりとも高めることができます。

(2)植栽環境

 上記の通り、①冷え込み、②日照、③湿度 の3つの要素により紅葉の美しさは変化します。この中で②、③は植栽する場所や環境によって影響されます。毎年きれいに紅葉しないお庭のモミジは、これらに問題がある可能性があります。

 秋に影ができてしまい②日照不足になってしまうと良くありませんし、日が当たり過ぎても③空中湿度が下がってしまいます。
 また、真夏の日差しは、紫外線や熱により葉っぱを痛めるだけではなく、幹や株元が熱されることで根からの水の吸い上げが弱まり、葉っぱに十分な水分を供給することができなくなります。すると「葉っぱが痛んでしまった状態で紅葉シーズンを迎えることになってしまい、結果的に綺麗な紅葉が見られなくなってしまいます。

 木々に守られた森や林 に自生するため、直射日光に当たることに慣れていない「モミジ」。庭にポツンと植えられ日差しを遮るものが無い環境は、モミジにとっては少しばかり厳しすぎ。


 対策はズバリ、株元や幹を夏の直射日光から守ること。これは紅葉だけに関わらず、「雑木」を健康に育てる共通の前提条件です。葉っぱを夏の日差しや乾燥から守るためには、できるだけ植栽計画時に下記①②を実践ください。
①東・南・西から日が当たってしまうような環境にならないよう、他の木々と寄せ植えにして互いに日差しから守り合う状態を作る
②フェンスなどで株元や幹に直接直射日光が当たらないようにして葉っぱに水を行き渡らせやすい環境を作る
詳しい対策方法は、こちらのページをご覧ください。

(3)夏の葉焼けを防止する

  春の若葉から葉っぱは徐々に弱っていってしまうのですが、紅葉シーズンまで葉っぱを綺麗な状態を維持することが綺麗な紅葉につながります。夏場に葉焼けもしくはその寸前の葉っぱが痛んだ状態になってしまうと、秋になっても綺麗に紅葉することなく、黒ずんだような褐色になってしまいます。

 葉っぱを綺麗に保つ方法として(2)で記載したこと以外に、「葉水(はみず)」が非常に有効です。葉水とは直接葉っぱに水を掛けて葉っぱに潤いを与えることを言います。夏の夕方に葉水を与えることで昼間に失った水分を葉っぱ表面から吸収することができるので、瑞々しい葉っぱを秋まで維持しやすくなります。

 夕方の水遣りのついでに、上空の葉っぱ目掛けて葉水を与えてみてはいかがでしょうか。

3.雑木の紅葉・黄葉の姿

実際の雑木たちの紅葉・黄葉の姿を写真中心に紹介したいと思います。(写真:我が家の庭)

(1)モミジ類

 紅葉の代表格。実際に一番原色に近い深紅の色合いになります。
 モミジと言っても様々な種類が存在します。大きくは「〇〇モミジ」と「〇〇カエデ」に分かれます。前者は「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」、後者は「ハウチワカエデ」「コハウチワカエデ」「トウカエデ」などが代表格。
 「〇〇モミジ」は葉っぱの切れ込みが大きいもの、「〇〇カエデ」は切れ込みが浅いものという区別がされています。ちなみに「カエデ」とは「カエルの手」に似ていることからその呼び方が変化してカエデになったそうです。
 また、モミジと言えば、「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」 が有名です。イロハモミジは「紅葉」、ヤマモミジやオオモミジは「紅葉」と「黄葉」が入り混じります。また、イロハモミジは葉っぱが小型で枝ぶりが繊細になりやすいので、庭で育てるのには適しているかと思います。しかし品種改良されたものが多く、その中間的な特徴を持ったものもあり区別するのが難しいので注意が必要です。

・イロハモミジ

・コハウチワカエデ

(2)コナラ

 雑木の庭の王様的存在の「コナラ」。高木なので管理面から躊躇してしまう人も多いかと思いますが、庭師による剪定もしくは2階から剪定可能な場所に植えるなどの工夫でリスクをカバーし、是非植栽して欲しい1本です。
 コナラの葉っぱは大きく厚みがあり、モミジのような繊細さや派手な発色はありませんが、褐色混じるオレンジ色のダイナミックな紅葉を見せてくれます。特に紅葉する過渡期は葉脈付近の緑からオレンジまでのグラデーションが芸術的な美しさを見せてくれます。

(3)ヤマコウバシ

 コナラに似た色合いの紅葉。葉脈の緑からオレンジに広がるグラデーションも似ています。紅葉が終わり葉っぱが乾燥して枯葉になった後でも 春の芽吹きまで 落葉しないのが特徴。

(4)オトコヨウゾメ

 落葉低木のオトコヨウゾメ。日差しに弱いので注意が必要ですが、上手く管理できればシックな色合いの紅葉を見せてくれます。赤い実も楽しめて、雑木の庭を引き立たせる名脇役です。

(5)アカシデ

 オレンジ色の美しい紅葉をを見せてくれます。色味はコナラに似ていますが、葉っぱは小さく厚みもありません。

(6)アオダモ

 紅葉の季節まで持たず、葉っぱが落ちてしまいます。暑さ厳しい住宅街でアオダモを紅葉させるのは難しいですね。落ちる前の葉っぱは1,2枚目のような色が抜けた姿。ただ、作庭した年だけ3枚目の写真のように紅葉したことがあります。シックな赤褐色の紅葉でした。

(6)コバノガマズミ

 パステルカラーに紅葉します。オトコヨウゾメに似た色合い。

(7)シロモジ

 赤身は全くない「黄葉」。シロモジもヤマコウバシのように春の芽吹きまで枯れ葉が枝に残ります。ただし葉っぱが薄く大きいため、ヤマコウバシのように葉っぱの原型を留めることなくグシャグシャの状態で枝に残るのであまり見た目は良くありません・・・

(8)クロバナロウバイ

 茶花としても使われるクロバナロウバイ。実は北米原産なのです。赤身の無い「黄葉」です。

(9)ジューンベリー

 こちらも北米原産。初夏の美味しい実、オレンジ色の紅葉と庭を賑やかにしてくれます。

(10)ブルーベリー

 果実が美味しいブルーベリー、実は紅葉が美しく長く楽しめます。マットな質感とシックな色合い、しかも紅葉の期間が非常に長いのが特徴。我が家では11月初旬から2月ぐらいまで楽しめます。

(11)ハクサンボク

 常緑低木のハクサンボク。常緑樹なのに「紅葉」?と意外に思われるかもしれませんが、この季節に落とす葉っぱは写真のように徐々に淡いオレンジ色になります。赤い実も楽しめます。

いかがでしたか? このブログが、あなたの庭の美しい紅葉の一助になれば嬉しく思います。