理想とするシンボルツリーの維持管理について(前半)

 街中を散歩したり車で通ったりするときに目にするいろいろなお庭。最近は庭を造らない家が増えていますね。庭のある家には「シンボルツリー」のと思われる木が植栽されているのをよく見かけます。威風堂々とシンボリックに良い状態を保っているものもありますが、中には「大き過ぎて管理に苦労しているのではないか?」とか「このままでは枯れていってしまうのではないか?」と感じてしまうことが多々あります。
 多くの人が、生まれて初めて植栽するのは、「家を建て庭づくりをする時」ではないでしょうか? 自分の庭を持つ初めてのタイミングでもあり、ガーデニング初心者である場合が大半かと思います。そのような人がシンボルツリーで失敗しないように自身の失敗談も含め、2回の記事で紹介したいと思います。

1.理想通りにいかないシンボルツリー・・・

 私が感じるのは、以下の2パターン。
・育ちすぎて困っている
・育たず困っている

まずは前者「育ちすぎて困っている」パターンから。これは年々爆発的に木が大きくなり、思い切った剪定をしてもまた2〜3年後には前回を上回るような大きさになってしまう状態。また繊細だった樹形がみるみる壊れていってしまう姿。
(「育たず困っている」パターンについては次回のブログで紹介したいと思います)

2.育ちすぎて困っている

 このパターンは圧倒的に「シマトネリコ」が多いですね。15年ほど前から流行し出した常緑高木。原産は沖縄や東南アジアの亜熱帯地域の植物。温暖化の影響や種から世代交代を繰り返すことで関東以南の平地で育てることが容易になりました。


 このシマトネリコ、成長スピードがトップクラスに速いことに注意しなければなりません。小さかった木がすくすくと縦にも横にも広がり、10年も掛からず屋根まで届くレベルまで成長してしまいます。付ける種の量もトップクラス。それで手に負えなくなり切り倒したり、大きくなるのを放任するしかなくなる訳です。

 成長するメカニズムは、①葉っぱで光合成して養分を作り、②その養分を新しい枝を延ばすことに使い、③新たに葉っぱを増やし、④光合成が増えることで更に養分が増える という繰り返し。まるで「投資で資産を増やす」かのようですね。

ではどうすれば成長を抑制できるか? それはズバリ、光合成で作られる養分を減らせばいいのです。主に「日当たりを抑制する」「葉っぱの量を人為的に減らす」の2つの方法があります。

(1)日当たりを抑制する

 南側に家がある場合であっても、夏場の正午の太陽光は約78度。影を作ることは出来ません。しかし、庭の東・西側が家に囲まれている場合は朝日や西日を遮ることができるので多少の効果はあると思います。以上のことから、①北側がベスト ②半日陰になる東・西側は若干コントロールしやすくなる ということが言えます。
 しかし一般的に庭は南側に面しているため、シンボルツリーの大半は南側に植えられることになります。そうなるとなかなか日当たりを抑制することで成長をコントロールするのは難しいというのが現状です。

(2)葉っぱの量を人為的に減らす(剪定の頻度について)

 つまり剪定することで枝葉を減らすということです。ここで注意しなければならないのはその頻度と切り落とす枝葉の量。「年2回ほどのこまめな剪定」が理想です。「3年程度のスパンで、大きくなったら一気に剪定しよう!」 と考える人が多いかと思いますが、この方法はお勧めできません。

下図をご覧ください。

 年2回ほど、全体の枝葉の総量の2~3割程度を落とす「こまめな剪定」は木に与えるインパクトが小さいため、緩やかな成長スピードを維持できる上、余分な栄養を蓄えさせない効果があります。また柔らかな樹形を維持するためには、枝の付け根から切り落とす「透かし剪定」をすることをお勧めします。

 しかし、数年に一度一気に剪定する方法では、落とす枝葉の全体に占める割合が大き過ぎて木へのインパクトが大き過ぎるため、生存本能なのか”我を忘れて”蓄えてきた養分を使い徒長枝を一気に伸ばし始めます。このことで樹形が乱れ、庭主が理想としているシンボルツリーのシルエットを維持できなくなる訳です。この光景は庭だけでなく残念ながら公共の街路樹や公園でもよく見かける現象です。

 しかし、こまめな剪定といっても具体的にどう管理するか? という疑問が出てきます。

 私がお勧めするのは「自分で剪定」すること。業者に頼む場合、こまめに剪定するということは出費が嵩むことになります。また、庭師にもいろんなタイプがおり、切り戻し剪定(理想とする木の外形を決め、そのラインからはみ出した枝葉をカットする方法。柔らかな樹形向きではない。)されてしまったり、透かし剪定だとしても庭主と庭師のセンスの違いで残したい枝を切られてしまったり、切られすぎてしまったり、ということも多々あります。

 5mを超えるような大きな木であれば安全の観点から庭師にお願いした方が良いかと思いますが、それ以下あればコツさえ掴めれば決して難しい作業ではありません。木とは長い付き合いになるので、剪定ばさみと園芸用の三脚を一脚用意して自身の手で育ててみてはいかがでしょうか? 

【具体的な剪定方法について】「透かし剪定」「忌み枝」でググるか、書籍(図解 自然な姿を愉しむ「庭木」の剪定 石正園 平井孝幸著)(大きくしない! 雑木、花木の剪定と管理 石正園 平井孝幸著)、本ブログ固定ページ「雑木の剪定DIY」 を参考にして頂ければ幸いです。

3.まとめ

成長の早い木をシンボルツリーに選ぶ際は、「日当たりが抑制できる場所に植える」「こまめに剪定する」ことを意識・管理すれば、あなたが理想とするシンボルツリーを維持できると思います。

次回のブログにて、シンボルツリ 「育たず困っている」パターンについて紹介したいと思います。