山採りらしい雑木の柔らかな樹形を維持する方法

 庭づくりを検討している人が「雑木の庭」を選択肢に挙げたときにまず引っかかることが、「雑木の大きさや雰囲気を維持できるかどうか?」ということだと思います。そのための定期的な維持管理方法についてはこれまでお伝えしてきましたが、今回はもう少し長いスパンで見た時に、「雑木が大きくなりすぎないか?」についてその疑問にお答えしたいと思います。

 雑木というカテゴリに分類される木は、基本的に成長が早いと言われおり、大きくなりすぎることを心配されるかと思います。特に小さな庭ではその不安もより大きく感じるのではないでしょうか。また同時に、華奢な柔らかな雰囲気の幹が時間と共に太くゴツくなってしまい、雰囲気が激変してしまうのではないかという不安もあるかと思います。これまでの記事でお伝えしてきた通り、枝葉を剪定により少なくすることで光合成で作る栄養分を抑制し成長スピードを緩やかにすることと、剪定による「枝の切り替え」により大きさを維持しつつ柔らかな雰囲気を保つことができます。

 しかし10年、20年というスパンで考えた時、さすがに限界があるのではないか?と疑問を感じませんか? 太くなった木の幹が細くなることは有り得ないため、私も10年も経つとさすがに丸太のような無骨な姿になってしまうのだろうと思っていました。しかし剪定の書籍などでその方法を知るにつれ、柔らかな樹形を長年維持できるイメージを持つことが出来ました。我が家の庭はまだ10年も経っていないので説得力に欠けるかもしれませんが、私なりの解釈も交えてそのあたりをお伝えしたいと思います。

長期的に雑木の大きさや柔らかさを維持する方法

 下図をご覧ください。忌み枝と言われる剪定すべき不要な枝の中で、「ふところ枝」、「ひこばえ」、「胴ぶき枝」の一部を残すようにします。将来それらがどのように成長するかを想像し、今現在雰囲気の良いエースの枝から世代交代出来そうな次世代のエースの枝のみ選んで残します。
(忌み枝についてはこちらの記事を参考にしてください)
 そして数年後にエースから太くゴツゴツしたベテランに変貌してしまった枝を切り、育ててきた若手エースの枝にバトンタッチさせる「枝の切り替え」を行います。
 これを繰り返することで10年ぐらいは柔らかな樹形を維持できます。しかし幹は徐々に太くなっていってしまいます。そのため、ひこばえを1,2本若手のエースとして育て、最期は主幹を根元からカットしてバトンタッチします。
 すると、その切り株から枝が生え始め、株立ちになっていきます。この枝を育てていくサイクルを回せば、きっとあなたの一生が終わるまで柔らかな樹形を保てるはずです。


 ただし、ひこばえが生えにくい樹種もあり、このようになるとは限りません。その場合は切り株から株立ちになるまでの間は周囲の木にひこばえの役割を果たしてもらうことになります。そういう意味では、作庭時に単木より株立ちを入れた方が長期管理の視点では有利なのかもしれませんね。

下枝剪定により山採り樹形に育てる

 次は、雑木を育てていく過程で山採りのような柔らかな樹形に育てていく方法をお伝えします。
下の図をご覧ください。植栽時はバランスの取れた樹形でも、成長すると樹高に対する下枝の相対位置が下がってしまい、ズボンが下がっているようなイメージに変わっていきます。これは、木は枝の先端から延び、下枝の高さは木が成長してもあまり変わらないためです。またこの状態を放置すると、水平に広がる下枝の先端からも成長を続けるため、結果ずんぐりした樹形へと変わっていってしまいます。
 しかし下枝を剪定することで成長のエネルギーを上側に集中できるため、木は上へ上へと延びていきます。その後また一番下の下枝を切ることを繰り返し、管理したい高さまで成長させます。その後は前述の管理方法で現状維持を目指します。

 ちなみに、山採りの木は、上記に近いことを自然の摂理の中で行っています。基本的に、自生する雑木の周囲にはたくさんの雑木があり、光の奪い合いをしています。幹にある程度日が当たるとそこから枝を出します。しかし日当たりが十分でなくそこから広がった葉っぱによる光合成の効率が悪いと、自ら枝を枯らしてしまいます。そして成長のエネルギーは上へと向かっていき、十分な光合成が得られる高さまで育ったところで枝葉を広げます。そのため、下枝が無く幹が細いスラっとした樹形に成長するのですね。
 投資に例えると、将来有望と思われるところに少し投資し、その結果が思わしくなければ損切りし、ある程度の結果が得られるところは増額するといった感じです。実に合理的なことをやっているのですね!

 ただし注意しなければならないことがあります。上記の下枝剪定によるスラっとした樹形をつくるときに日が当たりすぎる環境では上手くいきません。ただでさえ直射日光を嫌う雑木、その上、下枝を切ることで幹や株元に当たる直射日光を遮ることが出来なくなると、徐々に弱り最期は枯れてしまうことが容易に想像できます。この方法は、ある程度庭に木が植えられており、互いに日差しから守り合える環境の中で行って欲しいと思います。

いかがだったでしょうか? この記事があなたの庭づくりのお役に立てれば嬉しく思います。