雑木の庭 冬の剪定DIY
1.冬の剪定について
(1)冬の剪定の目的
庭づくり選択肢として「雑木の庭」を考えた時、どんな維持管理が必要で続けることが出来るか?といった疑問にぶつかると思います。その維持管理の中でも特に心配なのが「剪定」ではないでしょうか?
雑木の樹種の中には成長が早いもの、遅いものそれぞれ。成長の早いものは、1年で1mかそれ以上。特にコナラなどの日光を好む木にとっては、日差しを遮るものが無い庭の環境では光合成により養分を作りやすいため、望んでいない高さ以上にどんどんと成長してしまいます。また、一度太った幹は細くすることは出来ません。そのため、剪定作業は常に養分を作る葉っぱの量を減らすことで成長を抑制したり、雑木の庭らしい華奢な樹形を整えるために必要なことなのです。
落葉樹の剪定時期は春と冬。太い枝などをカットして樹形を整えたり太めの枝数を減らすのは冬。成長を抑えたり病害虫が発生しないよう風通し良くするために細めの枝を間引くのが春というのが基本的な考え方です。
落葉樹の冬の剪定は春の剪定と違い「枝だけの状態」で剪定できるため剪定箇所を特定しやすい反面、切る場所が不適切だと誤魔化しが効かないのでより慎重さが求められます。そういう意味では、冬の木の姿を見ると剪定のスキルが分かってしまいます。
このように雑木の庭の維持管理に重要な剪定。庭師に依頼するか、自分でやるか。この件についてはコチラの記事で詳しく述べているので宜しければご覧ください。
(2)冬の剪定の時期
落葉樹は、晩秋に休眠期に入り、冬の寒さに一定量さらされると「休眠打破」して根や新芽から活動を開始します。剪定はこの休眠期の間に済ませるのが大切です。
しかし庭に植えられた多くの樹種すべてが休眠期に入っているタイミングは意外と短く、晩秋の落葉期から正月までというのが私の住んでいる愛知県平野部の環境となります。
本などには「剪定時期は2月」と書かれていたりしますが、当然地域によって差がありますが少し遅すぎると感じています。過去の話ですが、1月末にモミジの太い枝を切ったとき、切り口から樹液が流れ出て数週間ほど止まらず焦ったことがあります。特にモミジは休眠打破が早いと言われており、年内に剪定を済ませることをお勧めします。
2.剪定の準備
剪定のための道具を紹介します。
- 剪定鋏
白ネギぐらいの太さまでの枝を切ることが出来ます。手際よく狙った場所でカットするのに適しています。 - 剪定用のこぎり
剪定ばさみではカットしきれない太い枝の切断に使います。 - 高枝切り鋏
三脚に乗っても届かない枝をカットするなど、あると非常に便利です。 - 三脚
園芸用の三脚。2.4mかそれ以上。あまり大きいと設置や取り回しがしにくくなります。庭木の大きさに合わせ、可能であれば2脚あると便利。4本足の一般的な脚立は地面の不安定な庭では危険なので使用を避けましょう。 - 癒合剤
太めの枝を切った際、切り口から細菌が入り込まないように塗布する癒合剤。トップジンMペーストという商品が有名です。
それ以外に、園芸用軍手や、剪定鋏やのこぎりを腰から出し入れできるような腰ベルトと鋏ホルダーもあると便利です。
3.剪定する枝の基本「忌み枝」について
「忌み枝(いみえだ)」という言葉をご存じでしょうか? 樹形を乱したり成長の妨げになるなどの理由で「剪定時に切るべき枝」として、盆栽や植木の世界で昔から使われてきた言葉です。忌み枝にはその特徴別にカテゴライズされており、それぞれ呼び方が決まっています。しかしそれらは本により差があるため、以降は雑木の庭の第一人者である石正園 平井孝幸氏の著書、”自然な姿を楽しむ「庭木の剪定」”に記載されている内容を前提に説明したいと思います。(非常に為になる本なので、自身で剪定される方は購読をお勧めします)
上図の①~⑩が「忌み枝」を表します。この中で⑧⑨⑩については、剪定で切り落としてしまうのではなく将来の「枝の更新」のために残すか切るか判断するものになります。「枝の更新」とは、長く太くなってしまった枝を、その脇に生える後輩のような若い枝に役割をバトンタッチさせるためにカットすること。
「ベテランの枝」の将来の引退を見越して、「次世代のエースの枝」を育てるような感じです。
①から⑦については、「綺麗な樹形を保つ」ことと「木の成長スピードを抑制する」ために、しっかり落としていきましょう。全体の 20%~30%程度葉っぱの量を減らすことをイメージして剪定してください。落としすぎると一気に徒長し始めてしまい 結果樹形が乱れてしまいます。ちなみに、剪定後に切ったことに気付かないような剪定が雑木の庭の良い剪定だそうです。
また、上図の青く表現したものについて、自論をお伝えしたいと思います。まず、「込み合っている枝」は本によっては忌み枝の一つになっている場合もあります。もしくは「④内向き枝」なのかもしれません。葉っぱは細い枝から芽吹くため、細い枝が入り組んだ状態は葉っぱが密集してしまい見苦しいどころか病害虫の原因にもなってしまいます。春には枝先の芽から20~30㎝程度枝が伸びることをイメージし、邪魔な枝は根元から切り落とすようにしてください。
もう一つ、「下枝」について。山採りの木は下枝がありません。光を求めて上へ上へと延びて光が届いたところで枝や葉っぱを広げるといった、合理的な自然の姿なのです。しかし、庭の環境ではなかなかそうはいきません。もしも庭に植えられた雑木が畑もので下枝が生えている樹形であれば、下枝を思い切って切ってみてください。すると成長のベクトルが上へ上へと変わります。その木の周囲が高木で囲まれているような木漏れ日環境であれば、山採りのような樹形に成長してくれると思います。
下の写真をご覧ください。この木は作庭時に盆栽サイズの木だったものです。下枝を横へ横へと伸ばそうとしていたのですが、思い切って下枝を切り続けたところスラっとした山採りのような木に変身しました。
山採りの木から胴吹きの下枝が生えてきて太く育ってしまったという人も、しっかりと掃うことをお勧めします。ただし、幹に直射日光が当たりすぎていることが原因で発生した胴吹き枝は、幹を日差しから守っている可能性があるため、別の方法で日差し対策をして木を守って欲しいと思います。
4.冬の剪定の3つの目的と実例
実際に行った冬の剪定を、下記の3つの目的別に実例で紹介します。
(1)メインの枝を切り替えて、ひと回り小さく仕立てる
これは、主幹と枝との分岐点で、勢いの強い主幹側をカットすることで全体的にひと回り小さく仕立てる剪定方法。
ここで注意しなければいけないのは、来年・再来年と継続できるように、次世代の枝を育てていくこと。剪定時に忌み枝の 胴吹き枝だとしても、将来を予想して活かせる可能性があるものは残しておきます。
(2)込み合った枝を透かして葉っぱの総量を少なくする
成長を抑制するために、前述の通り葉っぱの総量を抑えなければなりません。葉っぱは枝に付くので、枝の量をおおよそ20%~30%程度減らすイメージで枝を落としていきます。切るべき枝は、「忌み枝」で説明した①~⑦と、込み合った枝となります。
(3)不要な下枝を掃い華奢な樹形を目指す
下の写真はコナラ。作庭当時は高さも今の半分ほどしかなく枝も少なく貧弱な姿でしたが、7年が過ぎて理想的な大きさに成長したことから成長を抑制することと樹形を整えることに重点を置いています。
木漏れ日を形成するほど枝を伸ばしてきたので、当初からある主幹から生える一番下の枝を付け根から落とすことにしました。こうすることで雑木林に自生する樹形に近付きますし、太い枝が無くなることで上へ上腕ほどの太さまで成長してしまった幹の成長を抑制することができます。
他にも成長を抑制する剪定や、2階の雨どいに接触するような有害な枝を落とす剪定を行いました。
(4)その他の作業
我が家にはチャボヒバが3本植えてあります。南のフェンス際で直射日光を遮る役目を果たしています。枝が広がりにくいので越境のリスクが低い、お勧めの樹種です。
このチャボヒバ、紅葉シーズンぐらいから古い葉っぱが黄色くなり始め、剪定をする12月末には茶色く乾燥しパリパリに変わります。深い緑の葉っぱの中で悪目立ちしてしまうため、剪定も兼ねて毎年落とすようにしています。
その作業を写真を交えてお伝えしたいと思います。
枯葉を落とすとスッキリとした感じになります。落ちた枯葉は掃除せずそのまま。落葉樹の落ち葉と共に土に還しています。
作業は実に簡単。下の写真のように、手で軽く握り揉むようにするとパラパラと古い葉っぱだけ落ちていきます。脚立を使い、木の上側から下に向かい作業していきます。
いかがだったでしょうか? 先日私が実施した冬の剪定を紹介しました。ちなみに時間は5時間程度。仕事ではないのでスピードが求められることは無くゆっくり慎重に切る枝を見極めながらの作業でした。枝の量は自治体のごみ袋にギッシリ3袋ほど。
この記事が雑木の庭に興味を持っている方の何かの参考になれば幸いです。