雑木の庭の真夏の管理

 いよいよ夏本番! 梅雨明け間もないころが1年で一番暑い時期ですよね。植物たちも梅雨時期から一気に強い日差しを受けるようになり、その変化にストレスを受けてしまう時期です。梅雨明けから9月中旬ぐらいまでの期間は雑木や山野草たちも暑さに耐えつつ少しずつ弱っていってしまい、葉焼けしたり病害虫の被害を受けやすくなることがあります。この時期を乗り越えて綺麗な紅葉が見られるよう、良い状態を維持しながら猛暑を乗り切りたいですよね。
 そのための管理する上での注意ポイントをお伝えしたいと思います。

1.水遣り

(1)水遣り頻度は朝夕2回、タップリと

 梅雨明け後の晴天続きの場合は、原則朝夕2回、タップリと与えてください。ここで注意して欲しいのは、昼間の水遣りを避けること。環境にもよりますが、昼間は株元に熱を持ってしまうため、水遣りによってその水がお湯に変わり根を痛めてしまいます。もう一つ、昼間の水遣りで葉っぱに残った水滴に強い日差しが当たることによるレンズ効果で、葉っぱを痛めてしまいます。小学校の理科の授業で、虫メガネで紙に火を付ける実験をしたことがあるかと思います。水滴がレンズとなってしまいこのような現象が起こってしまいます。朝は遅くても8時まで、夕方は17時以降を目安にしてください。

 気温が高くなることで葉っぱからの水分の蒸散が増え、その分だけ根から吸い上げる水を多く消費します。もしも根から吸い上げられる水分量よりも、蒸散する量の方が多い場合は「葉焼け」と言って葉っぱの縁から枯れ込んでしまいます。
 水遣り量の目安としては、 日の当たり具合や土質、植栽、マルチングの状態などにより一概には言えませんが、私は雑木や山野草の植栽エリアで1分/㎡程度の時間を掛けています。10坪の庭ですが流れや庭石の面積を除くと5坪(約17㎡)ほど。これを15~20分ほど掛けて水遣りしています。上記を目安に、水遣り前の状態や葉っぱの健康状態などから自分の庭に合った適正量の感覚を身に着けてください。

 植え付けて間もない山野草やヤマアジサイなどは朝夕タップリと水を遣ったとしても昼間に水が下がってしまうことがあります。5月の開花期に植え付ける機会の高いヤマアジサイは梅雨明け時点ではまだ根の張りが十分ではなく、注意して観察することが必要です。この場合、木漏れ日や日陰の環境であれば昼間でも水遣りをしても弊害は出ることはないでしょう。また、以下で触れますが、株元のマルチングも効果的です。

(2)葉水(はみず)は葉っぱを長持ちさせる

 葉水とは、葉っぱに水を掛けることを言います。
水分は根から吸収する訳ですが、実は葉っぱからも水分を吸収するのです。特に夕方の葉水は、強い日差しで乾燥気味の葉っぱに直接水を当てることで水分吸収の即効性があります。この葉水により葉焼けを防ぎ、秋の紅葉シーズンまで綺麗な葉っぱを保てる可能性は高まります。注意して欲しいのは、朝の水遣り時は避けること。すぐに太陽が上がってくることで前述の「レンズ効果」で葉っぱにダメージを与えてしまいます。

 それ以外にも葉水には嬉しい効果もあります。

 効果2つ目は、病害虫対策になること。
雑木の葉っぱに下から水を噴射することにより毛虫やハダニなどの害虫を落としたり、乾燥を好むうどん粉病の抑制にもつながります。ハダニは葉っぱの裏側に付いているので、シャワーを下から上に向かって当てるようにしてください。

 効果3つ目は、空中湿度を高め、気化熱により温度を下げること。雑木や山野草は本来は冷涼な地域に自生しているものが多く、その環境は夜気温がグッと下がることで湿度が高まり露が発生します。
 葉水を遣ることでたくさんの水が葉っぱに付着して徐々に乾燥していきますが、そのときの気化熱で気温を下げ、湿度を高めます。風が無ければ朝まで快適な環境で葉っぱや幹を休めることが出来る訳です。

(3)根腐れに注意!

 真夏でも大雨が降ることは当然のことながらあります。あまり水を多く遣りすぎてしまうと、地中の停滞水の水位を上げてしまうことになり根が水に浸かることで根腐れになってしまいます。
 根腐れが起こると、「葉っぱが枯れる」、「葉っぱが落ちる」、「枝枯れする」 などの症状が現れます。しかしこの症状は実は水不足で起きるものと同じ。現象は同じでも原因は「水のやりすぎ」×「水不足」という真逆な原因なのです。

 根腐れは、地中の停滞水により細かな根が酸素を取り込むことが出来ず、機能が低下もしくは失ってしまう現象。そのため、根から吸収できる水分量が減ってしまいます。これは水不足と同じですよね。

 現象が同じなので原因の特定が難しいかと思われると思いますが、普通に水を遣っていて元気だった木の葉っぱが枯れていく時は根腐れを疑ってください。もしも、庭の1,2m地下の土質がグライ層(青灰色 の粘土層)の場合は水が停滞しやすく根腐れを起こすリスクが高くなります。可能であれば近所の造成地の地層などから庭の地下の土質を知った上で必要に応じて高植え、暗渠や縦穴などの停滞水対策をして植栽できるとトラブルは避けられます。ちなみに我が家はこのグライ層の地盤で、根腐れに苦労しています…
 大雨の後の晴天の日の夕方は表層を湿らす程度に水量を抑えるなど、土中の水分量を一定に保つイメージで水遣りをしてください。

2.施肥(肥料遣り)

(1)真夏の肥料は極力避ける

 暑さに耐え忍ぶ雑木や山野草に施肥をすることは、肥料焼けにつながり植物を弱らせてしまうリスクがあります。この季節は植物が夏バテ状態で本調子ではない上に、特に固形肥料はこの季節は水道の温度が高く溶け出す量も多くなることで根がダメージを受けて水を吸い上げる機能が低下してしまいます。その影響は葉っぱに現れます。前述の水不足や根腐れと同じように、「葉焼け」を起こしてします。それらと現象が同じなので、原因の特定を見誤らないように気を付けてください。
 トラブルを避けるため基本的に肥料は梅雨の中頃までに済ませておきましょう。

(2)山野草やヤマアジサイなら薄めの液肥で

 雑木は肥料を避けると言っても、山野草やヤマアジサイに対しては花後に元気を取り戻したい、来年の花芽のために肥料を与えたい、という場合もあるかと思います。その場合は、1500~2000倍程度に薄めた液肥を1週間に1度程度に抑えておけば、トラブルを避けることができるでしょう。

3.日当たりが良すぎる問題

 いくら水遣りや施肥に注意をしても、直射日光がガンガンに雑木の株元や幹に当たり続けたり、木漏れ日で育てる山野草やヤマアジサイに直射日光が長時間当たっりと日当たり環境が適切でないと、植物は徐々に衰弱して最期は枯れてしまいます。
 そうならないために一番大切なことは作庭時の植栽計画(デザイン)なのですが、たとえ適切な植栽計画だったとしても作庭間際は枝葉の数も少なく、日当たりのダメージを受けやすいのも事実。日当たりの悪影響を受けてしまいます。以下に簡単に出来る日当たり対策を紹介します。

(1)マルチングで根を乾燥から守る

 朝タップリ水を遣っても夕方には地面がカリカリに乾燥しているような状態ですと水切れを起こすリスクがあります。木漏れ日程度の環境で 根付いた雑木でしたら心配ありませんが、植栽して1年以下だったり、ヤマアジサイなどの小さく根の浅い植物はリスクが高くなります。水を吸い上げる根は細根と呼ばれる針金程度かそれ以下の細い根で、これらの根は地表付近に張り巡らされます。
 この季節の乾燥は表面から一気に進むので、地表付近の細根は水分を吸収できなくなってしまう訳です。そのためには水持ちの良い用土にすることで夕方まで乾燥しないよう維持することが必要になります。

 即効性のある方法として、マルチングという地表を乾燥から守る対策が効果的です。マルチングの材料としてバークチップが有名かもしれませんが、「雑木の庭の雰囲気に合わない」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。
 雑木の庭にお勧めなのは、①落ち葉・腐葉土 ②苔を敷くこと。落ち葉は、秋から冬にかけての落葉期に捨てることなく株元に撒いてやるだけでOKです。施肥との相性も良いので植物たちにとっていちばん嬉しい、おススメの方法です。見た目が気になるかもしれませんが、地下茎で広がる下草があれば春以降は落ち葉が目立つこともないでしょう。 腐葉土を使う場合は、なるべく葉っぱの形が残っているものを使ってください。一般的に販売している「腐葉土」は、バークという木や枝を粉状に粉砕したものが入っています。 粉状だと乾燥しやすくなってしまいます。

 苔庭を目指している、という人には苔がお勧めです。株元を覆ってやることで乾燥を防ぐと同時に水遣り時に保水してくれます。日当たりが良すぎる場合は「スナゴケ」、木漏れ日程度であれば「ハイゴケ」を選ぶと簡単に育てられるので維持が容易かと思います。

(2)寒冷紗(かんれいしゃ)で日差しから守る

 寒冷紗とは野菜を虫の侵入から守ったり、遮光したりするための メッシュ状のシートです。遮光の目的のものは黒色をしているのが一般的で、遮光率は50%や80%など、庭の環境に合わせて選ぶことが出来ます。
 この寒冷紗を直射日光が長時間当たってしまうエリアの上空に張って直接光が届かないようにする対策を取ることも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
「せっかく雑木の庭を作っても、寒冷紗なんて見た目が悪くあり得ない」と思われる方も多いかと思います。私も同じ感覚を持つ一人です。しかしこれは恒久的に使うのではなく、限定的な使い方であれば受け入れられるのではないでしょうか? 例えば、作庭間際の枝葉の少ない状態から枝葉が広がるまでの間、更に梅雨明けから9月中旬までの期間。しかも根を守りたい限られたエリアのみ。

 数メートルある庭木を上空から覆うことは現実的ではないので、フェンスや木の幹の間にシュロ縄を張り、その縄に寒冷紗を取り付ける方法をお勧めします。特に作庭後や植え付け後は植物がその地に根を下ろすことが出来るかどうかの大切な時期。植物の調子が悪いようでしたらこの対策を取り入れてみてはいかがでしょうか?

4.まとめ

  • 水遣りは朝夕2回、タップリと
  • 葉水は効果的
  • 葉焼けの主な原因は3つ 水不足か、水のやりすぎか、肥料のやりすぎか? 見極めが大切
  • 肥料は控えるか薄めの液肥で
  • 日差し対策はマルチング、寒冷紗が有効
  • 作庭時の植栽配置計画、水持ちの良い土質選びが大切(後からやり直せない…)

なお、固定ページにも水遣りについてまとめています。宜しければご覧ください。